中国江蘇省鎮江生態ニューシティとは
20世紀は都市化の世紀であった。世界の都市人口は2008年に初めて農村人口を超えて過半数となり、この100年間で2億5000万人から10倍以上の28億人にまで膨れ上がった。21世紀はこの都市化のスピードがさらに加速する。国連の予測では2050年に世界人口は90億人に、都市人口は60億人に達する。地球はまさに正真正銘の「都市惑星」になろうとしている。
しかし従来の都市発展は生物排除型、生態破壊型、自動車依存型、エネルギー多消費型の傾向を持ち、温暖化、大気汚染、生態破壊、過密過疎など地球レベルでさまざまな問題を引き起こしている。
中国はいま経済成長の道を爆進している。発展の原動力の一つが都市化である。中国の都市化はその規模やスケールの大きさにおいて、21世紀の世界の都市化を牽引している。億単位の人口が農村から都市に押し寄せ、既存都市の拡張とニューシティ建設の動きが全国規模で進んでいる。
もっとも中国のこれまでの都市化は渋滞、公害、生態破壊といった深刻な問題を数多く抱えてきた。発足間もない中国新政権は「生態文明建設」への取り組みを最重要課題の一つとして掲げ、都市問題と環境問題に対処しようとしている。中国共産党第18回党大会は、中国の特色ある社会主義事業を経済建設、政治建設、文化建設、社会建設の「四位一体」から、それに生態文明建設を加え「五位一体」に拡張し、生態文明建設を経済、政治、文化、社会建設の各領域とすべてのプロセスに浸透させ、自然を尊重し保護する理念を提示した。また、中国の環境政策の基礎をなす環境保護法においても、生態文明建設の理念を盛り込む方向で、改正が検討されている。
習近平国家主席は2013年3月8日に全国人民代表大会の江蘇省代表団の審議に参加した際、都市化を推進するにあたりクオリティを重視すべきである旨強調した。
江蘇省鎮江生態ニューシティプロジェクトは、中国の生態文明モデル都市造りの先駆けとして内外から高い関心を集めている。長江のほとりに位置する江蘇省鎮江市に220平方㎞のエリアで100万人規模のニューシティを建設する計画である。
このほど同プロジェクトは、周牧之東京経済大学教授を総合プロデューサー・総括とする世界トップの頭脳を集め、モジュール都市計画の手法を用いて都市造りの中で環境問題を包括的に解決するマスタープランを作成した。路面電車を域内交通の柱とし、計画エリアの35%に限って市街地化し、65%を農地、緑地及び水面とする。徒歩圏を中心とする立体型都市と緑あふれる生態環境とを両輪に、コージェネレーション(Cogeneration)とCEMS(City Energy Management System)を中心とする環境負荷の少ない省エネ・創エネ型都市エネルギーシステムを構築する。同プロジェクトは都市化の途を爆走する中国そして世界に向けて、都市問題及び環境問題の解決策を提示する試みであり、生態文明社会の建設を目指した日中協力メカニズムのモデルである。
中国国家発展和改革委員会は2013年4月25日、中国国務院の同意を得て『蘇南現代化建設示範区(モデル地区)計画』を批准し、鎮江生態ニューシティを「生態文明先行区」として明確に位置付けた。
こうしたなか日中の政府間で、同マスタープランをモデルとして、生態文明社会を具体化する新たな都市発展様式と日中協力メカニズムを形成する議論が始まっている。その協力メカニズムは日中産学官の力を結集し、世界の叡智を集めて都市化と環境問題という二つの大きな課題の解決に挑み、「地球益」を探求するものである。
中国江蘇省鎮江生態ニューシティ計画概要パンフレットをご覧いただけます。