(1)日本と中国の大型協力案件として欧州から日本に至るユーラシア大陸横断の広域インフラ(鉄道、道路、光ファイバー網など)整備と沿線開発を進める構想がでてきた。
(2)現代版「絹の道」といえるこの構想が進めば、エネルギー資源や食糧の輸送が効率化でき、それらの世界的な需給ひっ迫も防げる。
(3)計画が大掛かりなだけに、公的な資金だけでは賄えず、民間の長期資金を呼び込む工夫が求められる。
中央アジアの問題解決のカギ
中国の江沢民国家主席が昨秋日本を公式訪問した際に行われた「日中両国の二十一世紀に向けた協力強化に関する共同プレス発表」の中で「ユーラシアランドブリッジ構想」が、今後の両国経済協力の目玉の一つとしてとり上げられた。
この構想は、直接には中国の江蘇省連雲港を中心とする東部沿海地域からオランダのロッテルダムまでをつなぐユーラシア大陸横断広域インフラ(鉄道、高速道路、航空網、光ファイバー、パイプラインなどで構成)を整備し、その沿線開発も進めるものである。政府レベルでの青写真づくりはこれからで、それに向け筆者の考えを述べたい。
ユーラシア(日本を含む)は人口、国内総生産(GDP)、エネルギー資源確認埋蔵量で世界の約四分の三を占める最大の大陸である。冷戦時代、ユーラシアは、その東・西端に市場経済体制の国を有し、中間の広大な地域は計画経済体制下にあった。冷戦後中央アジアはソ連から解放されたが、民族主義、宗教などをめぐる問題が噴き出している。
その意味でユーラシアでの広範なインフラ整備は、中央アジアはもちろん域内全体、及び域外との連携を強め、「開かれたユーラシア」の実現に重要な役割を担う。ユーラシアランドブリッジ(以下ランドブリッジ)は、ユーラシア大陸の東西の基軸を成すものである。古代ユーラシアに交流と繁栄をもたらしたシルクロード(絹の道)の現代版として、日本を含むユーラシア諸国の産業構造、貿易構造を大きく変えうる。
カスピ海・中央アジアには巨大なエネルギー資源が眠っている。この地域の多くの国にとっては、資源輸出が当面の開発戦略のなかで唯一けん引力を期待しうる分野となっている。欧州では石油、天然ガスの需要増が当面既存の供給者からの調達で賄えるうえ、複雑な国際政治・民族問題により中央アジアから欧州へのパイプライン建設が阻まれる状況では、東向けのルートがより現実的だろう。
中央アジア諸国の国民経済の形成、市場経済への移行、民族問題の沈静化は、各国の資源輸出戦略の成否にかかっているといっても過言ではない。